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Enjoy@Books 「筑波に行った。車は二台で、ブルーバードとユーノスだった。……」と 書き出されるこの詩では、走り出したら止まれないような都会の日々を背後に アクセルが踏み込まれていく。次第に加速していく言葉たちが、 サイケデリックな色の氾濫へと変わっていく。 「ブルーバード」「仮面ライダーの眼が赤く光るブレーキ灯」「白い鼻毛」 「自殺防止用の銀色の柵」「木製の黒と白の勾配標」……。 そして「真夏の太陽がぎらぎら/ぎらぎら」と照りつける中、 寺の日陰は寒く、アスファルトはひからびた色を見せている。 抜け道をさがすが、海は紫色。「緑色の木が絡み付いている」。 言葉が、というよりも、それぞれの色合いが浮かんでは消えていく。 そして、すべての色の底に沈んでみえる、痛ましいほどの「青い/ブルー」。 [青。七月/杉山えつこ]
パチンコ屋で時間をつぶす、ゲームセンターでシューテュングゲームに耽溺、 ヘヴィメタル(死語かしら?)の音響にヘッドホンステレオで浸る。 これらはみな、ピアノを人前で弾くステージを控えた、 リハーサルが終わって本番までの時間の過ごし方の工夫の一端である。 どれも効果をあげ、また、あげなかった。 つまり練習が足りていればいい演奏ができるし、そうでなければ、 それなりといったことにかわりはないのだが、 それにしても本番前の時間の過ごし方について、けっこう戸惑う。 そんなときに読む「穴もぐり」が、好きだ。とくに、 「そうなってくるとむろんあなたは鼻眼鏡だろう/ 巷に氾濫したげげげ現代詩の惨状から見ると/ まんざら高すぎる思いもしないわけではなかった」 というところに何ともいえないフレーズの高揚感があり、 まるで音楽のようだ。実際、今の現代詩が惨状なのかどうかはおいておいて。 先日、本番を控えた舞台の袖で、この詩を眺めていた。 音楽とは全く異なるアプローチなのにそれでも音楽的な構造が、 ちょうどよい落ち着きを与えてくれた。 詩の非現実からハレの舞台へのシフトがとても心地よかった。 ちょっとケレンみのある、自分らしい演奏ができた夜だった。[穴もぐり/夛田真一] |